【Tokyo Pops編】

29 août 2017

Casse-croûte et delicatessen  2/2

著者の日本での食についての体験がユーモラスに語られるこの章の後半は、フランス風サンドイッチの写真撮影のモデルのアルバイトをしたときのエピソード。大きなサンドイッチを前に開いた口がふさがらなかった顛末です。

 

 

<原文>Casse-croûte et delicatessen2/2

 

Une fois dans le studio, le styliste de plateau2 déploie une nappe à carreaux rouges sur laquelle il installe un panier en osier, à double battants3.  Nous devons attendre l'entrée en scène du sujet principal de la photo, et l'assistant revient4 enfin avec un mystérieux accessoire5 enveloppé dans du6 papier.  Emi, un sourire radieux sur son visage, dévoile l'objet: un monstrueux sandwich crudités-jambon7 aussi long qu'une baguette8!  L'article d'Emi porte en effet sur l'une des rares spécialités françaises qui ne se mijote ou ne se cuit pas: le « casse-croûte ».

 

Notre stupéfaction9 est à son comble quand Emi nous explique la prise de vue.  Eva et moi devons faire semblant de planter nos canines dans le (même) sandwich, en le saisissant à deux mains (sa main droite et ma main gauche) et, photo de magazine oblige, en souriant de toutes nos dents.  N'étant pas des professionnelles des pubs de dentifrice10, il nous faut garder la posture afin que, parmi les trois pellicules prises par le photographe, un cliché soit retenu pour la parution.  Je suis furieuse11 de devoir tenir cette pose ridicule devant le charmant styliste12 qui, me semble-t-il, esquisse un sourire équivoque.

 

La séance finie, nous repartons avec une enveloppe dans notre sac à main.  Je suis Eva qui s'engouffre dans une supérette Seven eleven pour s'acheter trois nigiri13.

 

Il est assez cruel de devoir rester bouche ouverte pendant une heure devant un méga-sandwich, sans avoir le droit d'y enfoncer une seule incisive. Face au spectacle de mon amie qui s'acharne sur les emballages de nigiri, je ne peux réfréner un fou-rire, malgré les crampes que ce supplice de Tantale14 a infligé à mes mâchoires.

 

 

<試訳> 弁当とデリカテッセン2/2

 

 スタジオに着くと、撮影2のためのスタイリストが赤いチェック柄のテーブルクロスをひき、その上に両開きのバスケット3をのせた。私たちは主要テーマのシーンまで待たされ、アシスタント4が紙6に包まれた謎の小道具5と一緒に戻ってきた。エミさんは晴れやかな笑顔で包み紙を開けた。それはフランスパン8と同じサイズの巨大な生ハム7のサンドイッチだった。エミさんの記事は煮込んだり焼いたりしない簡単で珍しいフランスの名物料理がテーマだったのだ。

 

エミさんが私たちに撮影の仕方を説明してくれた時が驚き9の絶頂だった。

エヴァと私は、それぞれの片手で同じサンドイッチを掴みながら、かぶりつく振りをしなければならなかったのだ。しかも、歯が全部見えるように笑いながらだ。歯医者10の広告のプロではない私たちは、フィルム3本分撮られた写真の中から選ばれる1枚のために、姿勢を保たなければならなかった。微妙な笑顔を浮かべている素敵なスタイリスト12の前でこんな馬鹿げたポーズをしなければならないことに憤りを感じていた11

 

撮影が終わり、もらった封筒をバッグに入れてその場を後にした。私は、おにぎりを3つ買うために13セブンイレブンに駆け込むエヴァについていった。

 

1時間もの間巨大なサンドイッチを前に一口も食べられずに口を開けていなければならないのは結構辛かった。タンタロスの責め苦14の様に顎が痙攣していたが、おにぎりの包みと格闘しているエヴァを前に、笑いを堪えることができなかった。

 

 

 

部員A

部員C

部員A

部員C

部員A

部員C

エリック

部員B

カロ

リーヌ

部員D

部員A

カロ

リーヌ

部員D

カロ

リーヌ

部員B

編集長

部員D

編集長

1. タイトルのCasse-croûte et delicatessenなんですが、著者はこれまで、タイトルの言葉をDesign et décadence や accoutrements et antiquitésのように、アルファベットを対比させる言葉遊びをしていますよね。ここではCとDを並べているので、なんとか日本語もそれに応えたいのですが、何かできますか?

 

「お弁当とお惣菜」はどうでしょう。

 

でも、いまではカスクルートは結構使われているみたいだし、お弁当とイコールではないでしょ。デリカテッセンも同様なので、無理に遊ばずカスクルートとデリカテッセンにしておきましょうか。

 

 

外国語の言葉遊びやダジャレを翻訳するのは至難の業ですね、、、。

レーモン・クノーの「文体練習(原題:Exercices de style)」っていう本、知ってる?ひとつの短いストーリーを元に同じ話を99通りの異なる文体で描いているのです。日本語には朝比奈弘治氏が訳されていますが、この翻訳は難しかったと思う。

 

 

 

今度、それをテキストにしてみようか?今はここに集中しましょう。

2. plateauはスタジオセットとか撮影現場という意味ですね。ここでは。

 

3. un panier en osierは籐のバスケットでいいとして、à double battantsって何?

 

 

跳ね橋みたいに蓋が両側に開くタイプのことじゃない?

 

 

4. アシスタントは定冠詞がついているから、前出のスタイリストと同一人物ですね。同じ単語の繰り返しは避ける、というフランス語のルールは、気をつけなくては。

 

 

 

5. アクセサリーではなく、小道具の意味ですね。

6. なんで部分冠詞?unじゃ駄目?

 

 

unだと一枚の紙ですけど、これは紙というものに包まれてというか、要は紙にくるまったということです。

 

 

定冠詞、不定冠詞、部分冠詞のように日本語にない言葉のニュアンスをつかむのはちょっと難しい。

 

7. 試訳では生ハムと訳してしまったけれど、生ハムはjambon cru でこのcruditésは生野菜ですね。胡瓜、ビーツ、根セロリ、ニンジンなどを混ぜ合わせたサラダです。だから生野菜とハムのサンドイッチです。

8. バゲットと同じくらいの長さのサンドイッチというのは、パンはバゲットではないのですか?

 

いえ、バゲットでした。その時の写真があるのだけれど、恥ずかしいから見せられない。

その写真がコレ!あれ?写真ではエヴァは、左手、カロリーヌが右手でつかんでいますよ。

 

9. stupéfactionとsurpriseはどう違うのですか?

 

 

surpriseは待っていた、期待していたことが起きる感じ、stupéfactionはビックリ仰天「エエッ」という感じ。

 

 

 

10. 試訳ではdentifriceを歯医者と訳したけれど、歯磨きですね。コルゲートとか。

11. furieux (furieuse)はどんな怒り方ですか?

もう、お腹の底から湧きあがるような怒りですよ!。

 

 

 

はらわたが煮えくり返るような?

 

それだと、表情にでてしまう感じですよね。撮影では顔で笑って、腹の底は怒り狂っていたわけでしょ。

 

12. le charmant stylisteは女性ですか?

いえ、男性でした。この撮影ではエミさん以外のスタッフは皆男性でした。stylisteの綴りは男女同じです。女性だったらla charmante stylisteになりますね。

 

スタイリストは女性だという思い込みをまたしてしまいました、、、。

13. このpourは「お握りを三つ買うために」(目的)ですか?それとも「コンビニに入ってお握りを三つ買った」(結果)ですか?

結果ですね。「お握りを買うためにだけ入った。他のものはいらない」のではなく、とにかくお腹が空いていたので、何か食べるものを買いに行ったのです。

 

私たちはpourを常に「するために」と訳してしまいがちですが、「○○したら、こうなった」というニュアンスもあるということですね。

14. タンタロスの責め苦はギリシャ神話にでてくる飢餓地獄の話ですが、フランス語では「欲しいものを目の前にしながら手に入れられない苦しみ」という意味で一般的に使われているようなので、どっちを採用しましょうかねえ。

犬じゃないけど、「おあずけ」というのは?

 

 

おあずけ、では、この辛さがつたわらないですね。

皆さんお茶はいかがですか、、?

部員B

部員D

部員B

部員D

部員B

新入部員

部員A

部員C

編集長

カロ

リーヌ

部員B

部員C

部員A

全員

カロ

リーヌ

部員C

部員A

問答スタート!!

などなど、、、問答を経て。

↓↓↓

<部員による検討結果>

カスクルートとデリカテッセン 2/2

スタジオに着くと、男性スタイリストが赤いチェック柄のテーブルクロスをひろげ、その上に両開きの籐製のバスケットをのせた。私たちは撮影の出番まで待たなければいけない。

やっと、さきほどの男性が紙に包まれた謎の小道具を持って戻ってきた。エミさんは晴れやかな笑顔でその包みを開けると、それは、バゲット丸々一本使った巨大な生野菜とハムのサンドイッチだった。エミさんの記事はフランス料理には珍しい、煮たり焼いたりしない簡単なカスクルートがテーマだったのだ。

 

一番驚いたのは、エミさんが説明してくれたわたしたちのポーズだった。なんと、一本のバゲットのサンドイッチをエヴァの右手とわたしの左手で掴みながら、かぶりつくというものだった。しかも、歯磨きの広告モデルのプロでもないのに、歯が全部見えるように微笑むだなんて。雑誌に掲載される1枚の写真のためにフィルムが3本費やされた間、同じ姿勢を保たなければならない。微妙とも思える笑みを浮かべている素敵なスタイリストの前で、こんな馬鹿げたポーズをしなければならないなんて噴飯ものだ。

 

 

 

撮影が終わり、ギャラの入った封筒をバッグに入れその場を後にした。エヴァについていくと、セブンイレブンに駆け込み、おにぎりを3つ買っていた。

 

1時間もの間、巨大なサンドイッチを前に一口も食べられず口を開けたままでいろとは、あまりにも殺生ではないか。タンタロスの責め苦の状態のままで、顎は痙攣していたが、おにぎりの包みを開こうと格闘しているエヴァを前に、笑いを堪えることができなかった。

 

 

 

今回はカロリーヌさんとスカイプにてじっくりと話すことができた部員たち。なかなか晴れないモヤモヤが著者と話すことにより、あっさり解決。しかもカロリーヌさんがモデルとなった雑誌の写真まで!

なるほど。いままでの章で語られてきたあの時代(バブル期)を感じます。笑

もう一度、原文・試訳を読む

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