【Tokyo Pops編】

22 juin 2017

Accoutrements et antiquités 1/2

Design et décadenceの次の章です。タイトルの頭文字を合わせているのも意図的のような気がします。久しぶりに著者とその辺のところも尋ねてみましょう。

今回の話は、日本に来たばかりの時に居候していた青山の大邸宅から、乃木坂に住むエヴァの家に転がり込むことになったところから始まります。ある日、蚤の市で掘り出し物を見つけに原宿へ行き、竹下通りの奇抜なファッションに出会います。

 

 

<原文>C'est ainsi que je passai du trois cents mètres carrés d'Aoyama aux huit tatami et demi de ma copine de fac Eva.  Avec bouquins d'idéogrammes1, tenues de lambada2 100% vinyl3 et richelieux rose bonbon4 dans mes bagages.

 

Je posai ma valise devant la porte de la petite maison traditionnelle en bois de Nogizaka, rangeai mes chaussures5 dans la boîte à socques et fit glisser la cloison de papier de riz6. Je vis Eva. Elle posait devant Kumiko, une collègue de la banque qui accomplissait son devoir pictural, rideaux tirés, dans une ambiance lugubre.

 

Que dire de la tenue du modèle Eva...  Kimono de soie sombre, perruque de geisha poussiéreuse chinée aux puces un jour de cafard7. Dans le genre yôga, peinture japonaise de style occidental du début du siècle, on a fait mieux8.

 

Dans la moiteur de ce mois d'août, la lourde coiffure s'ajoutait au poids symbolique que supportait Eva depuis son arrivée au Japon, victime des règles étriquées de la société japonaise et de la pression du système de l'entreprise, monstre impersonnel et avide se nourrissant du souffle humain9.  Dérangée en plein exercice de son nouveau dada10, la peinture à l'huile, la collègue de bureau vida les lieux à regret.

 

Pendant qu'Eva se changeait, j'ouvris grand les fenêtres coulissantes11, laissant la brise et la lumière entrer dans la pièce et je planquai la perruque de jais sur la plus haute étagère du placard à futon.  Ce fut le dernier épisode de la vie d'Eva en parfaite courtisane du Moyen-âge, abandonnée derrière les paravents de sa retraite12.

 

 

<試訳> 奇抜なファッションと骨董 1/2

 というわけで、私はスーツケースに数冊の漢字1の本、100%ビニール製3のランバダ風の衣装2の数々、そしてピンクのアンズジャム味の飴4を詰めて、青山にある300㎡の邸宅から大学時代の友人であるエヴァの住む8畳半の部屋へと引っ越した。

 

 乃木坂にある昔ながらの小さな木造家屋の玄関前にスーツケースを下した。下駄箱に私の靴をすべて5しまい、障子6を開けるとそこにエヴァはいた。彼女は銀行の同僚のクミコが絵画教室の課題を完成させるのにつき合い、カーテンの閉められた暗い空間で、ポーズを取っていた。

 その時のエヴァの格好をどう表現したらいいだろうか・・・。暗い色のシルクの着物に、気の滅入った日7に古物市で買ったかのような、埃っぽい芸者のカツラをかぶっていた。洋画、つまり今世紀初めの西洋風日本絵画の分野でももう少しましな格好をしただろう8

 

 この8月の湿気の中でカツラの重さはただでさえ、日本企業の窮屈な規則の犠牲者であり、人間の苦しみ9を栄養とする非人間的な怪物のような会社のシステムのプレッシャーの犠牲者であったエヴァに日本に来てからずっと耐えてきた象徴的な重さを加えていた。クミコはその新しいお遊び10の真最中を邪魔され、いやいやながら急いで場所をあけた。

 エヴァが着替えをしている間に、私は引き戸式の窓11を大きく開け、部屋の中にそよ風と光を取りこんで、真っ黒なカツラを押入れの一番上に隠した。このエピソードはエヴァが彼女の人生において中世の完璧な宮中女官のように従順だった最後のひとつとなった。彼女は退職12という名の屏風の後ろにそれを投げ捨てたのだ。

 

 




編集長

部員C

新入部員

部員A

部員A

部員D

部員A

部員C

編集長

部員C

カロ

リーヌ

カロ

リーヌ

部員B

新入部員

部員E

カロ

リーヌ

新入部員

部員C

今回は、章がかわりAccoutrement et Antiquité。前章Design et décadenceのように、頭文字の音を語呂合わせは意識的だと思いますが、カロリーヌにさっそく聞いてみましょう。

確かに、音を繰り返し、読者に効果を与えたいと思いました。フランス語で特に詩を書く時によく使う方法です。「Allitératon」といいます。

 

1、idéogrammesは、文字通りとれば、表意文字ですが、漢字の辞書ですか。

 

実はその本は私の大学時代から持っている『Lire et écrire le japonais 2120 caractères常用漢字』という本と様々な日本語の教科書です。

2 & 3, 時代的にバブル期であれば、ランバダがディスコで流行していた時期と思われますので、「ランバダ風」というより「ランバダ用」でよいのでは?100%ビニール製の服は、ディスコ用の服であれば「エナメル製」かと思います。

 

 

うがちすぎのような気がしますが、みなさんいかがですか。

確かに、ディスコが流行った時期ではありましたが、エナメルはビニールではないので、ここは、あまり考えすぎず原文どおり100%ビニール製でよいと思います。つまり安っぽいということを言外に行っているのでは?ランバダ風か、ランバダ用かは不明ですので、ランバダ衣装でいいのかと。

 

4. richelieuxの意味は辞書によると ①編上げの短靴の一種:オックスフォードシューズ、紐付き短靴 こちらの方でしょう。

 

辞書ではrose bonbonには淡いピンクの、甘ったるいという意味があります。あっ、ロベールの仏和大辞典にキャンディピンクという言葉が載っている。

 

 

ということはrose bonbonでキャンディピンク色のということですね。キャンディピンク色のオックスフォードシューズですね。

 

 

それにしても荷物に漢字の本が入っているのは分るとしても、100%ビニール製のランバダ衣装、キャンディピンク色の靴だなんて凄いファッションセンスですね。

 

 

だから読んでいても著者の感覚についていけないというか、発想が分からないというところが随所に出てきます。言葉だけでそれを解き明かさなければならないのだから、大変です

 5. 「すべて」の記載は原文にないように思います。単に履いてきた靴をしまったのではないでしょうか。

 

そうですね。靴は1足でも常に複数形ですね。勘違しがちです。

 

 

6. 日本家屋で玄関側から部屋に入る場合の間仕切りはおそらく「ふすま」の方だと思います。

 

たぶん、そうです。カロリーヌの勘違いかもしれません。襖と障子の違いをウィキペディアのサイトを送り、確認してもらいましょう。

 

さすが! c'est logique avec 襖 .

新入部員、目のつけどころが違いますね!脱帽です!“papier de riz” は、英語でrice paper、春巻きの皮と覚えていて、何のこっちゃと思っていたら、それは、第2の意味で、第1の意味は、「 薄紙の一種。良質の亜麻・麻・木綿などを原料とした不透明な薄い紙」。すでに知っていると思い込んでいる単語ほど、別の意味があるので、あれ?と思ったら調べる習慣をつけたいものです。

7. un jour de cafardとは憂鬱な日、という意味ですか。

そうです。憂鬱な日に買い物をしたら、やっぱり明るいものを買う可能性は薄いです。

 

8. on a fait mieuxとは、20世紀はじめの洋画のモデルの方が優れている、という意味でしょうか。

 

 

 

ポーズをとっているEvaは洋画の雰囲気にの通り。少し似ていると言えるけれど、その時の彼女は、精神的に悲惨な状態だったのでそういう立派な比較をするに耐えない。洋画はすぐれた絵だと思うけれど、エヴァの格好は結局その雰囲気はあるけれどちょっと失敗です。エヴァの格好に対する皮肉を込めています。「大正時代のかつらをかぶっている西洋の女性の絵」が、すぐれた洋画の域に達するには、更に努力と才能が必要という意味です。

 

9. 直訳で、「人の呼吸を糧にする人格のない貪欲な怪物」、いわゆる「場の空気」のことだと解釈していました。

あっ!いけない!souffle(息)をsouffrance(苦悩)だと勘違いしていました。

 

 

「人の吐く息すらも食い物にする」という感じでしょうか。

 

10. son nouveau dadaはどう訳しましょうか。dadaはシューレアリスムの先駆けになったダダイズムのことでしょう。新しいダダイズムと訳しても判りにくいのではないかと思って、「新しいお遊び」としてみたのですが。エヴァの勤務先の同僚ということですから、画家ではないよね。素人の趣味レベルで絵を描いているのだからダダ風とか、ダダ気取りのとかになるのかなあ?

 

Dadaというのは、趣味という意味で使いました。 ”Violon d'Ingres”(玄人裸足)または、”passe-temps” と同様の意味です。

11. 雨戸でいいのでは?

 

カーテン締め切っている上に雨戸はないと思いますよ。雨戸ならvoletでしょう。

Sliding windowです。『窓』でOKです。空気が重いので、風を部屋に入れたかったのです。

12. このセンテンスは本当に分らなかったというか、意味不明でしたね。

初めにsa retraiteを退職と訳してしまったけれど後の方を読むと、エヴァは銀行を辞めてはいないし、「辞める」であればdémissionですよね。それと abandonnéeは投げ捨てたという行為を表すのではなく過去分詞で「打ち捨てられた」ということじゃない? それにしてもderrière les paravents de sa retraiteはどういう意味?これはネイティブの意見を聞いてみましょう。

 

sa retraiteは隠遁所とか隠居所という意味ではないですか?例えば平安時代に天皇が退位して上皇になって御所から別の場所に移るとしますね。その時、御付の女官が一緒に行くことを想像すると分ると思います。

 

それでは「平安時代に宮中から隠遁所に移り、几帳の陰にひっそりと暮らす非の打ちどころのない女官のようなエヴァの人生はこれまでとなった」とかでしょうか。つまり彼女の暮らしはこの後、多分、勝負服がランバダ衣装という(笑)著者と暮らすことで、次第にはっちゃけたものになったということですかね。

 

皆さんお茶はいかがですか、、?

カロ

リーヌ

カロ

リーヌ

編集長

部員C

部員E

新入部員

新入部員

カロ

リーヌ

部員B

編集長

新入部員

部員A

カロ

リーヌ

部員E

部員A

ヴァンサン

★仕事中に

呼ばれる

 

編集長

問答スタート!!

などなど、、、問答を経て。

<部員による検討結果>

↓↓↓

これでもかファッションと骨董品 1/2

というわけで、スーツケースに日本語の辞書や教科書、100%ビニール製ランバダ衣装、そしてキャンディピンク色のオックスフォードシューズを詰めて、青山にある300㎡の邸宅から大学時代の友人であるエヴァの住む8畳半の部屋へと引っ越した。

 

乃木坂にある昔ながらの小さな木造家屋の玄関前にスーツケースを下した。下駄箱にわたしの靴を入れ、襖を開けると、そこにエヴァが居た。銀行の同僚、クミコの絵画モデルに駆り出されたエヴァは、カーテンの閉められた暗い部屋で、ポーズを取っていた。

 

その時のエヴァの格好をどう表現したらいいだろうか・・・。暗い色の絹の着物に、憂鬱な日に蚤の市で見つけたかのような埃っぽい芸者のカツラをかぶっていた。洋画といわれる20世紀初めの西洋風日本絵画のモデルの方が優れていた。

 

 

湿気の多い8月に、ずっしりと重いカツラはエヴァが日本に来てからずっと耐えてきた重みを象徴していた。彼女は日本企業の窮屈な規則、人の息を貪り食う人間味のない怪物のような会社の仕組みにつぶされた犠牲者であった。クミコは、趣味の油絵描きを邪魔され、渋々ながら、早々に場所を空けた。

 

エヴァが着替えをしている間に、私は窓をすべて全開し、部屋にそよ風と光を入れながら、真っ黒なカツラを押入れの一番上に隠した。平安時代、宮中から隠遁所に移り、几帳の陰にひっそりと暮らす非の打ちどころのない女官のようなエヴァの日々は、この時、終止符が打たれた。

 

エコール・プリモの夏学期のスケジュールや、仏検の会場での配布用チラシの作成などで、更新がすっかり遅れてしまった、この翻訳問答クラブ。しかし、このクラブの活動でスカイプを利用してカロリーヌさんとやり取りをしていることもあり、エコール・プリモのレッスンにスカイプを導入する事になりました。

 

そしてブログも、見てくれている方々の意見等、コメントを取り込めるようにしたいねとの案も。今後の発展をお楽しみに!

 

もう一度、原文・試訳を読む

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