【Tokyo Pops編】

19 mai 2017

Design et décadence  2/2

突如「泥酔状態」のデカダンスなところから始まった、この「Tokyo Pops」。この突拍子のない切り口とユニークな表現がこのエッセイの魅力なのかもしれません。
そして今回から頼もしい新入部員も加わり、皆で誤訳箇所を血眼で探し、どうあがいても分からない表現は積極的に原作者のカロリーヌに質問するなど、クラブ活動としても盛り上がってきました!

 


<原文>L'Asahi Beer Hall, coiffée d'une gigantesque flamme dorée, mélange1 de joaillerie et de sculpture monumentale, se juchait sur un trône d'escaliers hollywoodiens2 dans le quartier le plus traditionnel de Tôkyô, créant un anachronisme3 de plus dans la ville.

 

L'imposante sculpture de métal jaune4 arrimée5 sur son toit a laissé cois6 plus d'un Japonais.  Les uns7 la baptisèrent8 le « C'est-quoi-ça? »9, d'autres10 s'en amusèrent11 et la surnommèrent  « La Crotte d'or ».  Personnellement, face à ce monument, je pensais plutôt à une invasion de petits hommes d'or12.

 

Notre quintet débarqua au pied de13 cette construction féérique.  Cendrillon de la bulle des années quatre-vingt14, je savourais15 chacune des marches gravies, oubliant que ma limousine avec chauffeur reprendra sa forme initiale de simple bicloune aussitôt les douze coups de minuit sonnés16, heure fatidique communément choisie par les lignes de métro pour ramener les derniers fêtards dans leur maison de béton, de paille et de papier.17

A l’intérieur de cet OVNI, la foule18est bigarrée et cosmopolite. Parmi les convives, Françoise Moréchand, pareille à la Reine des abeilles entourée de sa cour.  La plus médiatique des expatriées françaises appartient au cercle des talento, les gaijin japonisants, chouchous des chaînes de télévision.19 Des caméléons20 qui revêtent à la demande et à volonté21 les habits du comédien, du chanteur, de l'invité de marque ou du présentateur, sans jamais se figer22 dans aucune catégorie artistique précise.

 

Françoise Moréchand ne compte plus ses entreprises à succès, de la production télévisuelle au23 conseil en art de vivre, en mode et décoration24.  Vampires25 charmants mais insatiables26, les Japonaises qui papillonnent autour d'elle, sont avides de transfusions27 de mode d’emploi de la vie à l'occidentale.  Elles28 doivent considérer la Française29 comme l'un des plus précieux gisements de prêt-à-vivre30 de l'Archipel.(Tokyo Pops, chap. <Design et décadence > p. 8)

 

 

<試訳>デザインと退廃 2/2

アサヒ・ビアホールは金色の巨大な炎を頭に載せ、宝飾品と記念碑が混ざった形1をしており、東京で最も伝統的でもあり、街にアナクロな雰囲気3をもたらす一角にハリウッド映画のような階段状の冠2を頂いていた。

屋上に固定された5黄色い金属の堂々とした彫刻4は日本人をおとなしいままにはさせなかった6。ある人たち7は「なんじゃ、こりゃ?」9と名付け8、別の人10は「金色ウンコ」とあだ名をつけて喜んだ11。このモニュメントに面と向かって私は個人的にはむしろ小さな金色の異星人12が侵入してきたのだと思った。

我々五人組はこの浮世離れした建物の直下13で車から下りた。私が80年代のバブル時代のシンデレラだとしたら14、普通なら地下鉄が浮かれ騒いでいる最後の一団を彼らのコンクリートと藁と紙17の家に運ぶ運命の時間である真夜中の12時16の鐘と共に、私が乗ってきた運転手付きリムジンが変身前の単なる自転車に戻ることを忘れて階段を上る一歩一歩15を愉しんでいただろう。

UFOの中は種々雑多で国際色豊かな一団18がおり、その中に取り巻きに囲まれた女王蜂さながらにフランソワーズ・モレシャンがいた。タレントサークルに所属している在日フランス人の中でメディアへの登場が最も多く、日本に詳しいガイジンでテレビの寵児だ。19要求されるかあるいは本人がそれを望むことで21、彼女は俳優、歌手、スペシャルゲスト、司会者など何にでもなれる。決まった役割に自分を、押し込めない22変幻自在なカメレオン20だ。

アール・ド・ヴィーヴル(フランス式ライフスタイル)のテレビ向き製品23へのアドバイス、ファッション、室内装飾等24、フランソワーズ・モレシャンの成功例は枚挙に暇ない。チャーミングだが飽くことのない26吸血鬼25、日本人は彼女の周りを蝶々のように飛び回り、生活のやり方30を西洋式に変更27しようと熱望したのだ。彼女28はフランス人29であることが日本における最も貴重な宝の山であると判断したに違いない。




問答スタート!!

新入部員

カロ

リーヌ

★メール

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新入部員

部員D

編集長

部員C

新入部員

部員E

部員C

編集長

部員E

新入部員

新入部員

部員D

部員A

新入部員

編集長

1、「混ざった」はというよりも「融合した」の方がわかりやすいのでは?

2のイメージがよくわかりません。アサヒビルの本社社屋の最上階はビールの泡をイメージしたギザギザになっていますけれど、それのことかな?筆者に聞いてみるしかないですね?

 

部員A

建物の写真を見たらわかりますが、入り口に高い階段があります。これはドラマッチクな入り方だと思います。階段は立派で、高く、trône、つまり玉座の様に建物の一番高いところに黄金の炎を戴いているような感じでした。ハリウッドというのは50年代のアメリカ映画からの連想で、ハリウッド女優が階段を降りて場面に登場するイメージがありました。私がそこに着いたのは夜でしたから一層立派な舞台のように思えて、とても印象的でした。

 

であれば訳としては「(50年代の)ハリウッド映画を髣髴させる階段状の玉座の上に金色のモニュメントを戴いていた」にしましょう。

部員B

3は、le quartier ではなく、L’Asahi Beer Hallにかかっていると思います。

4は、黄色い金属の彫刻ではなく、金色のモニュメントの方が読みやすいかな。

部員C

5は、「固定された」より「きちんと置かれた」とか「鎮座した」がよいでしょう。

6のa laissé cois plusは否定のneが省かれていますね。「日本人を無言のままにしておかなかった」という否定形より「日本人の間で物議をかもした」「話のタネになった」という肯定形の方がぴったりのような気がします。

部員E

9の« C'est-quoi-ça? »と敢えて、ハイフン(-)を入れているので、和訳にもそのニュアンスを反映すると「ナニ・コレ?」なんてどうでしょう。

 

7、ここでは金色の炎の形をしたモニュメントに対して、日本人の間で起きた意見や感想が述べられているのですから「ある人は○○と言い、また別のある人は××と言った」とすべきだと思います。

 

部員B

8は「名付け」より「命名し」、11は「喜んだ」より「面白がった」が近いのでは。

11については異論があります。s'en amusèrentが再帰動詞になっているのは複数の人がふざけ合ったというより、誰かが面白いあだ名をつけて自分で面白がったということなのでは?

部員D

「~と命名したひともいれば、~と面白がった人もいた。」というのはどうでしょうか。

 

素晴らしい!なんと頼もしい新入部員でしょう。

編集長

12は文字通り訳せば「金色の小さな人類の侵入」ですが、「金色の異星人」ということでしょうか。これも筆者に意味を聞いてみましょう。

そうです。普通、みんなが想像する異星人は緑色ですが、周囲が金色だから、金色の異星人が金色の炎の形をしたUFOに乗ってやって来たと私には思えたのです。

 

カロ

リーヌ

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13は「建物の真下でリムジンを降りた」

14は「80年代バブル期のシンデレラ=私」。時制の条件法は文法上の「過去における未来形」ではないですか?

部員B

そうでしょうか。savouraisはsavourerの半過去。シンデレラ状態を「享受していた」でよいのでは?

 

16は、「真夜中の12時」がよいか、「零時」だと12回鳴らない?

 

 

新入部員

面白い指摘ですが、両方とも鐘は鳴りますね。

17は、直訳すれば、確かに、日本家屋は、藁と紙の家、ではありますが。日本人としては、畳と障子に書き換えたい気分です。

部員C

18のla fouleが定冠詞なので、中にいる人全部が、というニュアンスがあるように思います。「UFOの中は雑多で国際色豊かな人たちでごった返していた」という感じはどうでしょうか。

 

19のles gaijin japonisantsも20のdes caméléonsも複数なので、フランソワーズ・モレシャンひとりのことを言っているのではなく、ガイジンタレントたちはということです。

 

部員A

La plus médiatique des expatriées françaises appartient au cercle des talento, les gaijin japonisants, chouchous des chaînes de télévision.は、すべて同格だと思います。「サークル」という言葉はちょっと違和感があるので「仲間」くらいでどうでしょう。21のvolontéには冠詞が付いていないので成句ではないでしょうか。つまり、「求めに応じていくらでも」という意味に考えられると思います。

22は、~にこだわる、固執するということなので、どのジャンルもこだわらない何でも屋であると皮肉っぽい。

部員B

23はテレビ向け製品ではなくテレビ番組ですね。それに、de~au~ですから「テレビ番組出演からファッションやインテリアへのアドバイスまで」です。

24は、en mode et décorationと同格でconseilにかかっていると思います。

新入部員

25のvampires 28のellesもモレシャンの周りに集まる日本女性たちJaponaisesを指し、29はモレシャンのこと。

26のinsatiablesは、「貪欲な」の方がわかりやすいと思います。また、transformationではなくtransfusionを使っていることから、「変更する」ではなく「取り入れること」とした方がよいのではないでしょうか。

新入部員

30は、「生活にたやすく取り入れることができる」とも訳せるのかもしれません。

prêt-à-porter:既製服

prêt-à-manger:ファーストフード

prêt-à-penser:借り物の思想

aliments prêts-à-consommer:調理済食品

となれば、prêt-à-vivreは、「(フランスの真似をした)借り物の生活スタイル」ということになりませんか。Carolineに聞いて見ましょう。

 

 "prêt-à-porter"と言う表現を真似して、勝手に"prêt-à-vivre"ということばを作りました。簡単に借りる/使えるライフスタイルの指導/説明 (英語もないけれど、英訳すれば"ready-made life style"になるでしょう)

 

 

カロ

リーヌ

★メール

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皆さん、そろそろお茶にしましょうか?
ところで、文中のフランソワーズ・モレシャンの実名は、元のフランス語版には敢えて仮名で書かれていました。今回、和訳を出すに当たり、実名を出してもよいかとカロリーヌが、Mmeモレシャンに直接メールで本文を送ったところ、快諾のご返事をいただきました。あれから20年ですから。

 

などなど、、、問答を経て。

↓↓↓

<部員による検討結果>

デザインとデカダンス 2/2

宝飾品とモニュメントが融合した巨大な金色炎を頭上に乗せたアサヒ・ビアホールは、東京のなかでもとりわけ昔の雰囲気が残る界隈にハリウッド映画に出てきそうな階段状の玉座を戴き、この町との時代のずれを創り出していた。

 

屋上に鎮座した金色の堂々としたオブジェは日本人の間に物議をかもした。「ナニ・コレ」という人もいれば、面白がって「金のウンコ」と名づける人もいた。このモニュメントを目の当たりにして、まるで小さな金色の宇宙人が侵入してきたかのようにわたしには思えた。

 

我ら五人衆はこの浮世離れしたビルの真下で車を降りた。80年代バブル期のシンデレラのわたしは、夜中の零時の鐘と共に、運転手付きリムジンが自転車に変身することを忘れて、階段を一歩一歩、味わっていた。零時とは、地下鉄が、最後まで浮かれ騒いでいるひとたちをコンクリートか、藁か、紙でできた家に運ぶ運命の時間なのだ。

 

 

 

 

 

このUFOは雑多で国際色豊かな人たちでごったがえしていた。その中に、取り巻きに囲まれた女王蜂さながらのフランソワーズ・モレシャンがいた。タレントグループに属し、メディアへの登場がもっとも多く、テレビの寵児だ。こうしたガイジンタレントたちは、求めに応じて俳優、歌手、スペシャルゲスト、司会者など何にでもなれる。ジャンルにこだわらない変幻自在なカメレオンだ。

 

フランソワーズ・モレシャンの成功例はテレビ番組出演からファッション、インテリア、ライフスタイルへのアドバイスなど数え切れない。チャーミングだが貪欲なヴァンパイアの日本の女性たちはモレシャンの周りを蝶のように飛び回り、生活様式を西洋風に変えることに躍起となった。日本女性にとっては、モレシャンが、お手軽で貴重なレディメイドの情報源に思えたにちがいない。

Tokyo Pops, chap. <Design et décadence > p. 8

今回も想像力豊かな著者の言い回しに苦闘した部員達でした。このあと原作では、このアサヒビールのオブジェのデザイナー(イラストに書かれている人物!)が登場する記述があります。それが前回のデカダンス(泥酔)と結びつき「Design et décadence」という章のタイトルになるという訳です。

こうして読み返すとクスっと笑ってしまう表現もありますが、翻訳中は常に?マークの連続です!

 

次回のアップは5/31を予定しております!

もう一度、原文・試訳を読む

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