【Tokyo Pops編】

5 novembre 2017

Pause éphémère à Kyôto

新たな仲間やプリモに遊びに来たゲストなどを交え、盛り上がっている翻訳問答クラブですが、

最初の試訳で思い込みからくる勘違いなどにより、思わぬ方向へ翻訳は向かっていきます。それを皆で意見し合いゴールを目指します。

今回は著者のカロリーヌさんへの質問もたくさん出るとともに、フランス語以外にも、舞妓さんのことなど思わぬ知識を得ることができました。

 

 

<原文>Pause éphémère3 à Kyôto

 

Après l’effervescence3 de Tôkyô, deux jours d’escapade3 à Kyôto représentent sans doute1 le meilleur antidote au stress et à l'irrépressible envie d'enfourcher chaque soir ma bicyclette pour2 pédaler jusqu'à un karaoke de quartier ou un bar de Roppongi. Dans l'ancienne ville impériale, je prends conscience qu'il existe une huitième merveille du monde4.

 

Mon auberge, de style nippo-occidental5, combine la patine japonaise6 au charme des maisons familiales de mon enfance en France.  Il souffle ici un air de Taishô7, époque où les Japonais se piquèrent8 des nouveautés en provenance de l'étranger. Une curieuse imagerie vestimentaire, à la fois drôle et pittoresque, émergea de ce mélange entre l'Est et l'Ouest. Ainsi9, certains hommes n'hésitaient pas à assortir leur kimono d'un prestigieux chapeau haut de forme, d'une canne élégante ou d'un très chic pébroque noir.

 

Les geisha10 férues de mode, chaussaient des talons hauts11 ou des bottines sous leur traditionnel vêtement de soie. Les franges et les chignons apparurent dans la rue, reléguant aux placards12 perruques et longues barrettes à cheveux kanzashi.

*

Le parquet de la chambre13 craque sous mon chausson, et je remarque le vieux téléphone posé au chevet du lit.  Le combiné noir laqué me ramène aussitôt dans la maison de mes grands-parents à Champtoceaux, sur les bords de la Loire.  Amusée, j'introduis mon index dans le premier trou du cadran et lui fait faire un demi-cercle vers la droite, puis écoute religieusement14 le bruit du ressort quand il revient en arrière, aussi régulier que le chant des suzumushi, les cigales japonaises.

*

Dehors, la nuit est presque tombée – il est cinq heures passées – et je commence ma promenade15 vers la Rivière Kamo.  Pour s'y rendre, il faut traverser le quartier de Gion.  C'est un monde à part peuplé de silhouettes de maiko16, les apprenties geisha. Elles apparaissent furtivement au détour d'une venelle dévoilant la blancheur de leur nuque et le flamboyant motif de leur kimono, avant de s'évanouir mystérieusement17.

 

 

 

<試訳> 京都での束の間の3休息

 

刺激の多い3東京での生活の後での二日間の京都の休暇3は、おそらく1最良のストレス解消となり、自転車に乗りたくてたまらない気持ちを抑えてくれるだろう。というのも、東京では毎晩、近所のカラオケ店や六本木のバーに自転車通いをしているからだ2。天皇が昔住んでいたこの古い街は、世界の七不思議4の次の八番目の不思議に加えられるはずだ。

 

わたしの泊まった宿は、日本と西洋の両方のスタイルを兼ねており5、日本の古い家具6とフランスでの子供時代の家庭的な味わいが入り混じっていた。ここでは、日本人が外国生まれの新しいものを珍重していた8大正時代の雰囲気を醸し出している7。和洋折衷から浮かび上がるイメージは、奇妙で、風変りであるが、興味深いものだ。例えば9粋な男たちは、敢えて着物と調和よく合わせていたものは、しゃれたシルクハット、上品な杖、シックな黒の雨傘であった。

 

おしゃれに夢中な芸者10は、かかとの高い草履11や編み上げ靴を伝統的な絹の着物で履いていた。芸者の鬘と簪と呼ばれる長い髪飾りは押入れの中に片づけられている12ので、日中、街で見かける芸者10のヘアースタイルは前髪を下げ、アップにした巻き髪にまとめていた。

 

宿の寄せ木細工の床13は、スリッパで歩くと、きしむ音がした。さらに気づいたのは、枕元に置かれた古い電話器だ。この光沢のある黒い電話器は、ロワール流域のシャントソーの街にある私の祖父母の家をすぐさま思い出させてくれた。ふざけ半分で私は人差し指をダイヤルの一番目の穴に入れ、右へ半分回した。そしてダイヤルが元に戻るときにぜんまいの音が静かに14聞こえた。その音は、日本の鈴虫の鳴き声と同じ規則的な音だった。

 

外は夜の帳が落ち始めていた。たぶん5時過ぎ、鴨川へ散歩に出かけた15。その川へ行くには祇園の花街を通ることになる。この街は住宅街とは異なり16、芸者になるまでの修行時代の舞妓と呼ばれる娘たちの姿が見られる世界だ。舞妓は艶やかな着物を着て、白い衿足を見せ、素早く路地の曲がり角から現れ、魔法のように17あっという間に姿を隠す。

 

 

 

 

 

 

問答スタート!!

部員A

部員C

部員E

部員B

部員B

部員C

部員B

部員C

部員C

部員A

部員B

カロ

リーヌ

カロ

リーヌ

新入部員

カロ

リーヌ

部員A

部員C

1. 長くsans doute を「疑いなく」と解釈していたんですよ。あるとき、フランス語の先生から「sans douteは『多分』とか『恐らく』であって、『疑いなく』だったらsans aucun douteというべきだ」と言われて目からうろこでしたね。

 

2. 前にも同じ例がありましたけど、pourをいつも「~のために」と訳しますが、何々した結果こうなったというような場合に使われることがあります。

これも思い込みのひとつですかね。

ここでもペダルを漕ぐために自転車に乗るのではなく、自転車に乗ってペダルを漕いでカラオケに行くんですものね。

4. ところで、今気付いたのですが、ひょっとして、éphémère, effervescence, escapadeは、頭文字eから始まる単語ですが、意識的か、偶然か、著者に聞いてみませんか。

偶然だったけれど、読みやすくなるように同じ”音”を「使うことが大好き。Allitérationですね。

 

4. Dans l'ancienne ville impériale のニュアンスがいまひとつ

昔の都である京都に自分が居ると、この美しい町を見て『ああ!きっと、ここが、8番目のふしぎだ!」と思う。世界の7不思議という表現があるけれど、もし8番目があったら、きっと京都だと思う、という意味です。

実は、フランス語では、『すばらしいもの/merveille」という言葉を使っています。

英語wonderであれば驚き、不思議さ、素晴らしさの意味もありますが、

フランス語は、「不思議」ではなく「素晴らしい」の意味です。

つまり、私にとって京都は、不思議ではなく、「ああなんて素晴らしい」という感情です。

 

 

そうなると日本語では何と訳しましょう。

5. nippo-occidentalは和洋折衷と訳したら?

6. 家具だけではなく、建物が年を経て変色し、古色している、でしょうか。

 

7. souffler un airを「雰囲気を醸し出している」は良い訳だと思うのですが、むしろ原文を直訳して「ここには大正時代の風が吹いていた」も悪くないと思います。あるいは「大正時代の空気が漂っていた」とか。

8. se piquerはどう訳しましょう?試訳では「珍重していた」としています。辞書では「自分の身体に刺す」「誇る」「自慢する」「自負する」などですが、「身に付ける」とか「自分のものにしている」というニュアンスでしょうか?

辞書によれば、se piquer deには、実にたくさんの意味がありますね。「~を誇る、自慢する」の意味もありますから、試訳の「珍重していた」でよいのでは?

 

9. ainsiは「このように」と訳しがちですが、ここでは、「例えば」ですね。

 

10. ここでのgeishaは芸者でも舞妓でもなく、前のパラグラフの男性に対比させた、若い女性を指していると思います。つまり、こんな格好ですね。→

 

 

わたしは京都出身ですが、昔も今も、プロの芸者であれば、普段でもこのような格好はしません。念のために著者に確認しましょう。

 

 

誤解してごめんね。芸者の代わりに、原文のフランス語も「日本の女性」les femmes japonaisesと直してください。

11. talons hautsは1語でハイヒールのことです。それから別の項でもエヴァが蚤の市で買ってきた鬘の話が出てきましたけど、筆者は日本髪は全部鬘(かつら)だと思い込んでいるのでしょうか? それをそのまま訳すか、別の言い方をするか?

 

芸者さんはみな鬘です。舞妓さんは自毛ですが、芸者さんは、みな鬘です。(一同、知らなかった~と唖然)

12. 試訳ではreléguant aux placardsのジェロンディフを理由、結果と解釈して「押入れの中に片づけられているので」としていますが、ここでは同時性と考え「押入れに片づけて」と考えた方がよいと思います。

13. 宿のchambreなので「寝室の板張りの床」でしょうか、

それとも和洋折衷の宿なので寝室はたたみの部屋で、軋んだのは「板張りの廊下」のような気もします。

 

寝室の板張りの床が軋むような音がしました。

14. religeusementのニュアンスがよくわかりません。

1 敬虔な気持ちで聞いた

2 祈りを込めて聞いた

3 静かに聞いた

1も3もあり、尊敬の意味があります。

15. ma promenadeはわたしの好きな散歩、という意味でしょうか。

 

予定している、計画している、という意味があると聞いたことがあります。

 

散歩を予定している?ってピンときませんが、著者に聞いてみましょう。

 

好きという意味ではなく、むしろ予定した散歩、散歩したいと思っていたという感じです。

さすが新入部員!恐れ入りました!

16. C’est un monde à part peuplé de silhouettes de maiko

「住宅街とは異なり」ではなく、祇園は他とは違う場所で、舞妓さんの姿がたくさんある、という意味ではないでしょうか?

その通りです。C'est un monde à part = 普通のひと、平凡なひとの世界と違って、例外的な/exceptionnel世界です。その例外的な世界(祇園の町)を歩くと舞妓さんの姿をみることが多いです。

17. mystérieusementは「魔法のようにあっという間に」、というより辞書に載っているように「ひそかに、秘密裏に」あるいは「神秘的に」というニュアンスを生かしたいです。「魔法のように」というとパッと姿を消すようなイメージになるので。

皆さんそろそろ、お茶はいかがですか、、?

部員B

部員D

カロ

リーヌ

カロ

リーヌ

部員A

部員D

部員A

部員A

カロ

リーヌ

部員C

部員A

部員D

部員B

部員C

部員C

カロ

リーヌ

編集長

などなど、、、問答を経て。

↓↓↓

<部員による検討結果>

京都、束の間の休息

東京にいるといつも神経が昂ぶっているので、2日間の京都行きは、恐らくストレス解消のための最良の特効薬となる。しかも、毎晩、自転車で近所のカラオケや六本木の酒場に行かずにはいられない気持ちも治まるのだ。昔、御所が置かれたこの町に来ると、世界7不思議の次の8番目が京都だと思えるほどすばらしい町である。

 

わたしが泊まった和洋折衷の宿は、フランスで子供時代を過ごした我が家のような魅力と歳月を経た日本の味わいとが調和している。ここには大正時代の空気が漂っていた。当時、日本人は外国から来た新しいものを珍重していた。東西が混ざり合った滑稽で、風変りな服装のイメージが出現し、たとえば男たちは、堂々と着物に立派なシルクハット、洒落たステッキやシックな黒い傘を組み合わせていた。

 

おしゃれに夢中な若い娘たちは、伝統的な絹の着物にハイヒールや編み上げ靴を履いていた。日本髪の鬘(かつら)や簪(かんざし)は戸棚に追いやられ、前髪を下げ、アップにした巻き髪にまとめていた。

 

その宿の寝室の板張りの床は、スリッパの足元で軋み、枕元には古風な電話が置かれていた。光沢のある黒い受話器を見てすぐに、ロワール流域のシャントソーの街に住む祖父母の家にいるような気がした。ふざけ半分で人指し指をダイヤルの一番目の穴に入れ、右へ半分回した。ダイヤルが元に戻るとき鈴虫の声のような規則的な発条(ぜんまい)の音を厳粛な気持ちで聞いた。

 

外は夜の帳が落ち始めていた。5時過ぎ、行って見たいと思っていた鴨川へ散歩に出かけた。祇園の花街を通らなければ、そこには行けない。祇園は他の場所とは違って、芸者になるために修行する舞妓の姿がある。舞妓たちは、人目を偲ぶかのように路地の角から白塗りの襟足を露にし、艶やかな着物を着て現れたかと思うといつのまにか姿を消している。

プリモのある駒場東大前もだんだんと秋が深まり、窓から見える公園の葉も少しずつ色を変え始めました。

11月は仏検がありますね。ただ今、試験会場で配布するチラシを作成中です。

2次試験対策の他にも、再度1次試験を目指す人に、ご自身の答案をもとにどこが苦手なのかなど弱点解明を織り交ぜた、仏検専門のプライベートレッスンを作ります。

レッスンを受けて、息抜きに翻訳問答クラブ(参加無料)をのぞいてみる。

これが駒場東大前の秋の過ごし方です!

もう一度、原文・試訳を読む

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